アメリカの古典的ゲイ小説・フロント・ランナー

涙無しでは読めない名作

 とある論文で紹介されていた『潮騒の少年』と『フロント・ランナー』。読んだ順番は『潮騒の少年』→『フロント・ランナー』でしたが、個人的には『フロント・ランナー』がとても素晴らしい作品だったので、先にこちらを紹介します。

日本では、1980年代後期から90年代初期にアメリカのゲイ文学を翻訳して紹介する動きがあったそうで、これらの作品はその流れを担った作品です。

この時代もまだまだ日本では同性愛者の人たちはクローゼットにいる状態で、どう生き抜くかと考えたときに、結婚をカモフラージュにする、というアドバイス位しかない時代でした。

日本では最近までゲイに対する関心は薄く、フロント・ランナーのあとがきによると、アメリカでもゲイ・ムーヴメントでは欠かすことのできないストーン・ウォール事件も日本では報道もされていなかったそうですね。

 

もふもふは、昔生粋の腐女子でしたが、大学生になって興味が無くなりました。

商業主義のBLって、内容薄いんですもん。

じゃあ、フロント・ランナーや潮騒の少年はBLかというと、私は同性愛文学にあてはめます。

その根拠として、内容が、重い。

この作品を通して社会問題や人としての尊厳とは何なのか、という深い次元にまで読者の関心を持っていく/その契機になる作品を、もふもふは文学というのかなと感じています。現時点では。

なので、美しいゲイたちの性的なシーンだけを見たい人には上記の2作品はおススメしません。

 

とりあえず、この本を読んで電車で最後泣いた。

 

こちらの本ですね。

フロント・ランナー

フロント・ランナー

  • 作者: パトリシア・ネル・ウォーレン,北丸雄二
  • 出版社/メーカー: 電子本ピコ第三書館販売
  • 発売日: 1990/10/01
  • メディア: 単行本
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潮騒の少年 (新潮文庫)

潮騒の少年 (新潮文庫)

 

 では、あらすじ行きましょう。

 

あらすじ

1974年、ゲイでありそのことで陸上競技のコーチ を辞めさせられたハーラン・ブラウンに、3人の美しい、才能あるゲイのランナー、ヴィンス、ジャック、ビリーがコーチを頼みにやってくる。彼らもまた、将来有望の選手であったが、ゲイであることがばれ、ホモフォビックな学校から、追放されてしまったのだった。この3人を引き受けることにしたハーランは、次第にビリーに惹かれていき二人は遂に結ばれる。

そして、1976年のモントリオールオリンピックに向けて練習を重ねるが、この3人に立ちはだかるのは、ホモフォビアであり権威主義の選手協会や周りからの嫌がらせであった。精神的に参ってしまったジャック、協会により選手資格を剥奪されてしまったジャック、しかしビリーだけは立ち向かい、モントリオールオリンピックアメリカ代表にまでなる。しかし最後待ち伏せていたホモフォビアがビリーを襲う...

 

感想

アメリカのゲイがいかに社会に立ち向かうのが困難だったのか…まずはその一言に尽きます。

日本と比べると、今のアメリカでは断然同性愛に対する理解は進んでいると思います。(州によるけど)でも、映画にもなったミルクも殺害されているし、ここまで来るにはゲイたちは本当に苦労をして、権利を勝ち取って来たんだなと思いました。

アメリカ人の、自分たちの権利は自分たちで勝ち取るという態度には感心します。

 

ミルク [DVD]

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また、日本と違って主張が激しいアメリカが、いかにゲイを公の場で、汚い言葉で非難することを身をもって知ることが出来ました。きっと、ティモシー・シャラメも1970や1980年初期にエリオをやっていたら、世間の反応は違っていたものでしょう。そもそも引き受けていなかっただろうし。

だから、アメリカがCall Me By Your Nameを芸術品とみなし、アカデミー賞まで受賞するなんて、本当にアメリカ社会は変わったと思うんです。

 

 

 あとがきでも書いてありますが、この作品はまだゲイがエイズ問題に巻き込まれる前の話です。だから今作品でゲイの問題はエイズからは切り離されていて、それがまた貴重だな、と。

 ちなみに、『ハーランズ・レース』という邦題で続編が出てきます。最後が『ビリーズ・ボーイ』ですが、続編はおススメしません。

ハーランズ・レースだけ読みましたが、フロント・ランナーで描かれていた、困難に立ち向かう希望や、キャラクターの魅力が見事に半減しております。後付け?というかむしろ小説のジャンル変わっていないか、というところまでガラッと変更されているので、まるで別物。ハーラン、生徒に手を出すなよ....

 

というのも、1作目から10年以上経って書かれているので、作者さんも設定忘れてしまったのかな?と思うのです。

もちろん一巻の時には書かれていなかったエイズという問題が絡んでくるので、より重たい雰囲気になるのは、分かります。これだけの大きな社会の流れで、ただの一個人ではどうしようもないのだなとは痛感しました。

でも、でも、それとキャラが変わるのはなんだか違うのではないでしょうか。

だから、最終巻は翻訳されていないのかしら。

特に『ハーランズ・レース』の本の紹介には思い切り『フロント・ランナー』のネタバレがあるので検索しない方が良いです。

私はそれで結末を知ってしまったのです...

作者のパトリシア・ネル・ウォーレンさんですが、なんと2019年の2月に亡くなったそうです。私がこの小説を知った二ヶ月後…

 

英語原作はこちら↓

こちらだとキンドルで読めます!

The Front Runner (The Front Runner saga Book 1) (English Edition)

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