『君の名前で僕を呼んで』における鼻血シーンと他のクイア小説について
『君の名前で僕を呼んで』の鼻血シーンの意義
まだまだ夏ですね!call me by your nameだと、もうオリヴァーは帰ってしまった頃でしょうか。
そしてまだまだもふもふはこの本について考察しまくります。
あぁ、本当に私にはこの仕事があっているかもしれない。
ちょうど通勤中にイヴ・セジウィック氏の本を読んでいてこれは!と思ったのでかきます。
※いつかまとめて論文にしたいのですが今は箇条書き程度に。
読んだ本はこちら↓
- 作者: イヴ・K・セジウィック,Eve Kosofsky Sedgwick,上原早苗,亀澤美由紀
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2001/02/20
- メディア: 単行本
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かなり学問的でとっつきにくい文章ですが、何回も読んでいくとだんだんと断片的ですが分かってきます。まずは、目次だけ読むと楽ですよ。
今回は6章の『代行された殺人』より拝借いたします。
※ここから口調が変わります。
この本の6章では、スコットランド文学のジェイムズ・ホッグの代表作である『悪の誘惑』を引用し、義兄弟とのホモソーシャルな関係を述べております。
(ちなみにもふもふは、この本を留学中に読んだんだけど、とっても難しくて泣く泣くネットで日本語であらすじを読んだよ...いまとなってはクイア文学として述べる自信があるのだけどね!)
この物語は、同じ母親から生まれた、異父兄弟(不幸な結婚をした母親と仲が良かった牧師が怪しい)である快活な青少年の兄・ジョージと根暗でちょっと中二病が入っている勤勉な弟・ロバートが主役で、最後にはジョージがロバートによって殺されてしまうといった物語である(しかし、ゴシック小説であり、スピリチュアルな現象も物語のキーとして起きているため、詳細は不明。面白いので日本語訳を読んでみてください)。
ここで私が引用したいのは、セジウィック氏が、ロバートの鼻血について考察している箇所である。
ロバートは、ジョージを必要に追い回す。たとえ彼に疎まれようとも。そしてそれはテニスの試合中にも起こるのだ。彼はなんと試合中の兄にもぴったりと追い付いて回るのである(もうこれを聞いただけでロバートさん、ストーカーの域を超えていますよ。外野ももっと止めようぜ)。
もちろん、兄のジョージはきれてけんかになるのだが、セジウィック氏はここで興味深い個所を引用している。
彼は口と鼻から流れ出る血を止めようともせず、またその血を拭い取ろうともしなかった。
(p.153 より抜粋)
ここでいう彼は弟のひ弱なロバートである。セジウィック氏によると、『ここで特記すべきは、鼻からの出血によって、とりわけ女性特有の無力さが象徴的に示唆されていることだ。ジャネット・トッドが指摘するように、女性が性的な危機に瀕すると鼻から血を流すのは、18世紀小説の一つのパターンである(同上)。』
ここで、私はElioを思い浮かべた。
知的に早熟とはいえ、まだ17歳の少年のElio。
オリヴァーと比べて、身体的には未熟で劣っているElio。
きっと、初めて体をつなげたときは、Elioは『受け=女性』であっただろう。
つまり、セジウィックの理論に則ると、Elioが鼻血を出したとき、物語上、彼は「女性化」するのである。
ゲイ小説において、どちらが『女役』をするのかは割と重要である。
ゲイが一部の男性から嫌われるのは、男でありながら女性の領域=貫かれるということ、を犯しているからだそうだ。
今回、Elioは鼻血を出すことで、性的には女役を引き受ける。
(途中で上になっているという描写があるので、必ずしも彼がBLにあるような完璧な『受け』ではない)
そしてそれをなだめるのは優位に立つオリヴァーだ。
アントレ氏があえて鼻血のシーンを、この理論を知っていて書いたとしたらびっくりである、そして知らないで書いたとしても「クイアの王道」として驚きである。
そのほかのクイア作品でも『血』が出てくる
カップリングのどちらかが身体的不調を表すのはモーリスでも描写されている。
物語上の重要なシーンで、クライヴが女性に心を寄せるようになった時、そのきっかけは体調不良で看護をしてもらった時のことだった。
また、『出血』といえば、以下の2つの作品にも言える。
①デミアン
この小説は、訳者が言っているように「BL」とも捉えかねない作品である。
シンクレアが自分自身であるというデミアンとの関係は、とてもホモソーシャルである。(シンクレアが思いを寄せるエヴァ夫人も、女々しくない)
最後の最後、デミアンがシンクレアが敬愛するデミアンの母親から言付けとしてデミアンから「キス」される時、シンクレアはちょうど砲撃を受け、出血をしているところであった。
②ブロークバック・マウンテン
この物語では、ジャックもイニス両者とも、出血しているが、特に『受け』側であるジャックは、最後、大量の出血にまみれて死んでしまう。
こう見ると、いかにクイアな世界で『出血』が登場人物の役割/立場を記号としてあらわしているかが分かりとても興味深い。
きっと、あからさまではないクイア小説にもその傾向がみられる作品はあるかもしれない。まだまだそれは探求中である。
また考察が出来たら追記しますが、今日はここまで!
他の考察★
もふもふ、この映画好きすぎ(笑)
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欲しい。。。。。!がBL化されたコミックがつくと聞いてなんか売り方間違えてないかとも思ってしまう(作家さんに罪はない)
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